産業廃棄物の持ち込み処分|自己搬入できる条件と手順
「少量だから自分で処分場まで運べば安く済むのでは」——小規模な事業所からよく出る発想です。結論から言うと自社の廃棄物を自社で運ぶ分には許可は不要で、持ち込み処分は可能です。ただし守るべきルールがいくつかあり、それを知らずに運ぶと基準違反になります。この記事では、自己搬入の条件と実際の手順を整理します。
- 自社の産業廃棄物を自社で運ぶ「自己運搬」なら収集運搬業の許可は不要
- ただし車両への表示と書面の携帯は義務
- 持ち込めるのは事業者のみ。個人が事業系の産廃を持ち込むことはできない
- 処分を業者に委託する以上、マニフェストの交付は必要
- 受入品目・時間・分別基準は施設ごとに違う
自己搬入(自己運搬)ができる条件
許可が不要になるのは、自社の事業活動で生じた産業廃棄物を、自社で運搬する場合です。この一点に尽きます。
許可が不要な自己運搬
自社の事業場で出た廃棄物を、自社の車両で運ぶ → 許可不要
取引先・元請・グループ会社の廃棄物を運ぶ → 収集運搬業の許可が必要
グループ会社であっても法人格が別であれば「他人の廃棄物」です。ここを勘違いすると無許可営業になりかねません(産業廃棄物収集運搬業許可の取り方)。
また建設工事では原則として元請が排出事業者になるため、下請が現場から廃棄物を持ち帰る行為は他人の廃棄物の運搬にあたります(解体工事の廃棄物は誰が出したことになるのか)。
自己運搬でも守らなければならない3つのルール
1. 運搬車への表示
運搬する車両の両側面に、次を見やすく表示します。
- 「産業廃棄物収集運搬車」の文字(おおむね140ポイント以上)
- 排出事業者の氏名または名称(おおむね90ポイント以上)
許可業者と違い、自己運搬では許可番号の表示は不要です。マグネットシートを常備しておき、運ぶときだけ貼る運用が一般的です。
2. 書面の携帯
運搬中は次の事項を記載した書面を車両に備え付けます。
- 産業廃棄物の種類と数量
- 運搬を行う日付
- 排出事業場の名称・所在地・連絡先
- 運搬先の事業場の名称・所在地・連絡先
様式の定めはないため、社内でフォーマットを1枚作っておけば十分です。
3. 収集運搬基準を守る
- 飛散・流出させないこと(シート掛け、容器の使用)
- 悪臭、騒音、振動で生活環境を損なわないこと
- 他の廃棄物と混ざらないよう仕切ること
ここは要チェック
表示や書面の携帯を怠ると、許可が不要な自己運搬であっても収集運搬基準違反になります。「自社のものだから自由に運べる」ではありません。荷台にそのまま積んで走るのがいちばん危ない運用です。
マニフェストはどうなるか
ここが混同されやすい点です。
- 自分で運び、処分を業者に委託する → マニフェストの交付が必要(運搬の欄は自社、処分の欄は委託先)
- 自分で運び、自分で処分する(自社に処理施設がある場合) → マニフェストは不要
持ち込みだからマニフェストが要らない、ということはありません。処分を人に頼む以上、書面での委託契約とマニフェストが必要です(産業廃棄物マニフェストの書き方、産業廃棄物の委託契約書で確認すべきポイント)。
持ち込みの手順
1. 受入先を探す
自社の廃棄物の種類を受け入れている施設を探します。品目の許可範囲は施設ごとに違うため、「がれき類は受けるが廃プラは受けない」といった差が普通にあります(がれき類(コンクリートがら)の処分)。
2. 事前連絡・契約
初回は事前連絡が必要な施設がほとんどです。処分委託契約を結び、料金体系(トン単価か立方メートル単価か)、受入時間、必要書類を確認します。
3. 分別して積み込む
受入基準に合わせて分別します。異物が混ざっていると受け入れ拒否か割増料金になります。現場での分別が、そのまま費用の差になります。
4. 車両表示と書面を用意して運ぶ
前述の表示と携帯書面を準備します。マニフェストも忘れずに持参します。
5. 計量・荷降ろし・精算
入場時と退場時に計量し、その差で数量が確定するのが一般的です。荷降ろし場所の指示に従い、精算して終了です。
事業系一般廃棄物の自己搬入との違い
オフィスの紙くずや飲食店の生ごみなど、事業系一般廃棄物は市町村の処理施設へ自己搬入することになります。産業廃棄物とは搬入先も手続きもまったく別です(産業廃棄物と一般廃棄物の違い)。
市の施設では、搬入券の事前購入、事業者登録、身分確認などを求められることがあります。自治体ごとにルールが異なるため、各市の案内を確認してください(豊田市で事業系ごみを処分するには)。
自己搬入と委託、どちらが得か
単価だけを見ると自己搬入が安く見えますが、実際には次のコストが加わります。
- 往復の燃料費と高速代
- 運転する従業員の人件費と拘束時間
- 車両の維持費、シートや容器の準備
- 受入時間に合わせるための工程調整
少量・単発なら自己搬入、定期的にまとまった量が出るなら委託——というのがおおまかな線引きです。月に何度も運ぶ状況なら、定期回収に切り替えたほうが総コストは下がります(産業廃棄物処理費用の相場と料金の決まり方)。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人事業主でも持ち込めますか?
A. 事業活動で出た廃棄物であれば、個人事業主も排出事業者として持ち込めます。ただし家庭から出たものを事業者として持ち込むことはできません。
Q. レンタカーやリース車で運んでもいいですか?
A. 自己運搬であれば車両の所有形態は問われません。ただし表示義務と書面の携帯は同じように必要です。
Q. 県をまたいで運んでも許可は不要ですか?
A. 自己運搬であれば、県をまたいでも収集運搬業の許可は不要です。表示と書面のルールは変わりません。
Q. 現場から自社の資材置き場へ持ち帰る場合は?
A. 自社の廃棄物であれば自己運搬にあたりますが、その置き場が保管場所となるため保管基準の対象になります(産業廃棄物の保管基準)。
Q. 軽トラックでも表示は必要ですか?
A. 必要です。車種の大小にかかわらず、産業廃棄物を運搬する車両には表示が求められます。
Q. 一度に複数種類を積んでもいいですか?
A. 混ざらないよう仕切って積む必要があります。混載すると受入時に区分できず、混合廃棄物として高い単価が適用されることがあります。
まとめ: 許可は不要、でもルールはある
自社の産業廃棄物を自社で運ぶ分には許可は要りません。ただし車両表示・書面携帯・収集運搬基準の3つは義務であり、処分を委託する以上マニフェストも必要です。
持ち込みが向いているのは、少量・単発・近距離のケースです。運ぶ手間と人件費まで含めて計算すると、定期回収に任せたほうが安いことも多いので、頻度が上がってきたら一度見直してみてください。
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